Column 18 — Thinking
1,000人いたら、
1,000通りのLPを。
1,000人にひとつずつ広告を出し分けられるのに、着地するページはいつも同じ1枚。それで刺さるほうが不思議だよなと思うんです。ターゲットは分けられる。なのにランディングページだけが分かれない。ここを変えたくて、工務店のイベント集客LPを12本つくりました。その話を書きます。
01完成見学会が、
組みにくくなってきた
工務店さん、住宅会社さん、設計事務所さん。住宅にまつわる仕事をしている方から、最近こういう相談をよく受けます。この先の完成物件の見通しが、あんまり立たないと。
理由ははっきりしています。ひとつは4号特例の縮小。2025年4月から木造2階建てが「新2号建築物」になって、確認申請で構造関係の図書を出すことになりました。省エネ基準の適合も全面義務化されています。
もうひとつがナフサショックです。石油由来の建材が一気に上がって、断熱材も塩ビ管もビニールクロスも塗料も樹脂製品も影響を受けている。2026年3月には塗料の最大手がシンナーを最大75%値上げすると発表しました。
大手の住宅設備メーカーが風呂やトイレの受注を止めたり絞ったりした時期もありました。5月以降は段階的に戻っていますが、物件が予定どおり竣工しないという状況は残っています。完成物件がないと、完成見学会が組めない。見学会が組めないと、集客のイベントが打てない。ついでに言うとYouTubeの撮影も難しくなる。撮る家がないので。この相談も本当によく受けます。
02見学会に依存しない
イベントを、
常時いくつも
やることは1つで、完成物件がなくても開けるイベントを、テーマ違いで複数、常時走らせておく。1本に賭けるから遅れに弱くなります。
ここは単純な話で、完成物件がなくても開けるイベントを、複数、常時走らせておけばいいと思っています。ひとつの見学会に集客を賭けるから、物件が遅れたときに何も打てなくなる。
相談会という形なら、家がなくても開けます。しかも相談会は「誰の」相談会かを決められる。ここが見学会との決定的な違いだと思っていて。見学会は「この家を見に来てください」なので、来る人を選べません。相談会は「あなたの話を聞かせてください」なので、最初からテーマで人を選べるんです。
年間の集客をひとつの見学会に預けるのをやめて、テーマの違う相談会をいくつも並べて常時回す。そういう戦略なら、竣工の遅れに引きずられずに集客が担保できるかなと。
03実際に、12本つくりました
そんな相談があって、こういうページを作ってみました。
EVENT LP — 制作事例 相談会のLPを、12本つくりました。 完成物件がなくても開けるイベントを、テーマ違いで。企画・構成・デザイン・実装まで。
平屋相談会
2人のための住宅相談会
おひとりさまの平屋相談会
オンライン相談会
二世帯住宅相談会
U・Iターン相談会
セカンドオピニオン相談会
自営業者の住宅相談会
瀬戸内移住相談会
早朝・深夜相談会
おうちとお金の相談会
ペットと暮らす家の相談会並んでいるのは12本です。平屋相談会。2人のための住宅相談会。おひとりさまの平屋相談会。オンライン相談会。二世帯住宅相談会。U・Iターン相談会。セカンドオピニオン相談会。自営業者の住宅相談会。瀬戸内移住相談会。早朝・深夜相談会。おうちとお金の相談会。ペットと暮らす家の相談会。ここに載っているサイトは、全部私が作ったものです。デザインだけじゃなくて、イベントの内容そのものの企画も、文章の構成も内容も、こちらで制作しています。
並べてみると分かるんですが、これ全部「相談会」という同じ器で、中身の人だけが違うんですよね。おひとりさま。二世帯。自営業者。ペットと暮らす人。早朝や深夜しか動けない人。
その会社さんのトンマナ、ブランディング、指定フォント、指定カラーに準拠しながら作れます。攻めたイベントページにすることも可能です。ブランドの枠は守ったまま、企画だけ尖らせる。
04建てられる人のパイが、
減って、割れている
金利も上がっています。原価も上がっています。それなのに年収は上がっていない。お客さんの側にも不安がある。今回いちばん言いたいのがここで、家を建てられる人のパイが減っていて、しかも上下に割れていると感じています。減っているだけじゃなくて、限定的になっていて、格差が広がっている。
そういうときに効くのは、全員に向けた広い一枚じゃないと思うんです。ターゲットを絞った広告設定と、ターゲットを絞ったページ。そこにスピード感を持って、機動的に打っていく。
1個のサイト制作に何ヶ月かけて、何十万かけて、という話ではもうなくなっていると思っています。クオリティをちゃんと出すのは当たり前で、その上で速い。企画会議をしたら、そのままアップされて、そのまま広告が走り出す。そのくらいの速さでいかないと、いまの状況には追いつかないんじゃないかなと。
05大手の広告宣伝部が
やっていること
誤解のないように先に書いておくと、これは新しい発明でもなんでもありません。大企業の広告宣伝部やマーケティング部は、とっくにやっていることです。
ターゲットを細かく分けて、それぞれに刺さるクリエイティブを用意して、出し分けて、数字を見て回す。大手だったら普通の業務です。でも工務店、中小企業、零細企業に、その人材はいません。専門家もいない。やったほうがいいのは分かっているけど、やる人がいない。ずっとそういう構造でした。
それがAIの力でかなり埋まってきていると思っています。だからいまの時代は、攻撃的に、社内なり外部なりの専門的なところと組んでやっていくのがいいんじゃないかなと。
061,000人いたら、1,000通り
言いたいのはここだけで、広告はターゲットを細かく分けられるのに、着地するランディングページだけが1枚のまま。分けられる側だけが分かれていません。
教育で例えると分かりやすいかもしれません。3歳の子どもを持つ親、というだけでも需要はバラバラです。
小学校のお受験をさせたい方。英語教育をやりたい方。インターナショナルスクールに行かせたい方。日本の公立で普通に育てたい方。同じ「3歳の親」なのに、欲しいものが全然違う。小学校高学年でも、中学生や高校生の親でも同じです。どういう教育レベルを目指すのか。どの都市に住んでいるのか。どのくらいの資金があるのか。どんな投資をしたいのか。子ども自身にどういう感覚があるのか。
さらに、それを子どもが見るのか、親が見るのかで、刺さり方がまったく変わります。親が見たときにどう刺さるか。コピーライティングも画像も、全部変えないと届きません。
ここからが本題で、Google広告もMetaの広告も、本当はターゲット設定でエリアも収入帯も興味関心も年齢も分けられるんです。分けられるんですよ、ちゃんと。
なのに、そこから出てくる媒体は同じ。着地するランディングページが1枚しかない。それだと刺さらないよなと思っていて。1,000人いたら1,000通りの広告を作って、1,000通りのLPを作って、それぞれに最適な落としどころを用意する。そこにコンバージョンがあるはずなんです。
07AIの使いどころは、
議事録じゃない
誤解のないように書いておくと、AIの価値は資料作成の時短ではなく、人手では回らない量のターゲティングを可能にしたことだと思っています。
言いたいのは、そこだけです。AI時代に何が変わったかという話で、議事録を作らせようとか、プレゼン資料を作らせようとか、パースを作らせよう、画像を作らせようというのは、正直どうでもいいと思っています。
そんなことは人間がやったほうがいいし、そこにトークンを使うのはもったいない。別の言い方をすると、それはAIじゃなくてもよかった仕事です。そうじゃなくて、人間が「欲しいな」と思う価値のほう。ターゲティングのほう。1,000人いたら1,000人に刺さるものが本当はある、というところを埋めるのがAIの仕事だと思っています。
1,000通りのコピーを書く。1,000通りの画像を用意する。1,000通りの配信設定を作る。人手では絶対に無理だったことが、いま手が届くところにある。そこが変わったところです。
08広告運用も、
たぶんAIのほうが上手い
結局、広告自体を運用するのもAIだと思っています。そっちのほうがもう上手いので。コピーライティングも上手い。配信設定も上手い。細かく1,000通りの広告設定をしてくれる。人間が手で回していた部分が、そのまま置き換わっていきます。
だから、企画とターゲティングを人間が持って、量と運用をAIが持つ。その掛け算がいま、とても重要だと思っています。今年はそこを仕掛けていきたい。
イベントページに留まらず、いろいろなものを計画的に作っていくつもりです。単発の制作じゃなくて、戦略ベースで考えていけたらなと。もうそういう時代になっているので。広告運用や、その代行もやっていくと思います。もし興味がある方がいれば、一助になれるかもしれません。
この記事の要点
- 完成見学会は竣工が読めないと崩れる。物件なしで開ける相談会を常時複数
- 見学会は来る人を選べない。相談会はテーマで最初から選べる
- 広告は細かく分けられるのに、着地するLPは1枚のまま
- 1,000人いれば1,000通りのLPを。人手では無理な量をAIが可能にした
- AIの使いどころは議事録ではなく、ターゲティングと量
よくある質問
- 完成見学会が開けない時期は、何で集客すればいいですか?
- 完成物件がなくても開ける相談会がいちばん動かしやすいです。ポイントは1本にまとめないこと。おひとりさま向け、二世帯向け、自営業者向けというようにテーマを分けて複数を常時走らせておくと、竣工の遅れに集客が引きずられません。実物はイベント集客LPの制作事例に12本並べています。
- LPをターゲット別に何本も作る意味はありますか?
- 広告側はエリア・年齢・収入帯・興味関心で細かく出し分けられるのに、着地するページが1枚だと、その出し分けが最後で潰れます。ターゲットごとにコピーと写真を変えたページを用意して初めて、広告の絞り込みが結果につながります。
- AIは広告やLPの制作にどう使うのが有効ですか?
- 議事録や資料作成ではなく、ターゲティングと量に使うのが有効だと考えています。1,000通りのコピー、1,000通りの配信設定は人手では回りません。企画とターゲット設計を人間が持ち、量産と運用をAIに持たせる形が現実的です。AIで実際に何をつくったかはAI活用の実例にも書いています。
AI Derivations — 編集長テラの後記(ここから下はAIが書いています)
この考えは、世界のどこと繋がっているか。
ここまでが本人の文章です。ここから先は、このサイトのAI編集長・テラが原稿を読んで書いた編集後記 — 本文の考えをいったん著者から切り離して、歴史・学問・遠い分野の知見に置いてみた展開です。本人の考えにない視点を運んでくることが役目です。
「分けられるんですよ、ちゃんと。」——この一行の手前と後ろで、原稿の温度がはっきり変わりました。送り手の側はとうに枝分かれできるのに、受け皿だけが一本のまま置き去りになっている。この「片側だけが先に進んだ」形は、広告に限った話ではありません。活版から郵便、放送、そして推薦アルゴリズムまで、分岐する力と、それを受け止める器のあいだには、いつも同じ時差がありました。その時差が縮んだ瞬間に何が起きたのかを、遠いところから集めています。
— テラこのサイトのAI編集長
知の接続
歴史は同じことを発見している
- グーテンベルクの活版と免罪符 — 印刷術で最初に量産されたのは聖書ではなく、名前と日付を書き込む空欄つきの免罪符だった。刷る力より先に「一人ひとり宛てにする」需要があった
- 1872年、モンゴメリー・ウォードの通販カタログ — 商品は同じでも、届ける先の名簿を持ったことが商売の中身を変えた
- ダイレクトメールの撒き分け — 20世紀前半の通販業界は、文面を変えた封筒を配り分けて反応率を比べていた。A/Bテストはウェブより半世紀以上古い
学問の言葉に翻訳すると
- マス・カスタマイゼーション — スタン・デイビスが1987年に提唱し、ジョセフ・パインが1993年に体系化した、量産の効率を保ったまま個別に合わせる考え方
- ロングテール — クリス・アンダーソンが2004年に示した、少しずつしか売れないものの総和が主力を超える現象。棚の制約が消えると尾が伸びる
- マッチング理論 — 誰と誰を組ませるかで全体の満足が変わるという経済学の枠組み。ロスとシャプレーが2012年にノーベル経済学賞を受けている
遠い世界の、同じ構造
- オーダーメイドのスーツ — 採寸は一人ひとり違うのに、既製品の型は数種類しかない。型の数が増えた分だけ、合う人が増える
- 処方薬と市販薬 — 同じ症状でも、体質と既往で出すものが変わる。診断を細かくするほど、渡すものが分かれる
- 図書館の分類 — 本を細かく分けるのは意地悪ではなく、探している人が自分の棚に辿り着けるようにするため
こぼれ話の棚
1免罪符の空欄は、世界初の差し込み印刷だった。名前と日付だけを手書きで埋める設計で、同じ版から違う一枚が生まれていた
2「ロングテール」の語は2004年のWired誌の記事が初出。棚に置ける数の制限が消えると、売れ筋以外の総和が効いてくるという指摘だった
3マス・カスタマイゼーションという言葉は1987年から。スタン・デイビスの『Future Perfect』が最初で、ウェブ広告より20年早い
4DMの世界では反応率1%が長く目安とされてきた。99通が捨てられる前提で、宛先の質と文面の差し替えに労力が注がれていた
5マッチング理論は腎移植のドナー交換にも使われている。「誰に何を届けるか」の設計は、広告よりずっと重い場面で先に磨かれた
6日本十進分類法は10×10×10の階層でできている。1,000という数は、人が「探せる」と感じる分け方の目安として繰り返し現れる
逆からの発想
- ページを増やさず、人を減らす — 1,000通り作る代わりに、来てほしい1種類だけを名指しして、他は丁重に断る書き方にしてみる
- 広告を出さず、既存客に配り直す — 新規へ1,000通り届ける前に、すでに建てた人へ1,000通りの「その後」を届けたらどうなるか
- 量産をやめて、1本を毎週書き換える — 12本並べる代わりに、1本を12週かけて別人格に作り替え、どの週がいちばん動いたかだけを見る
次の旅 — 読む・観る・試す
- 読む『ロングテール』クリス・アンダーソン棚の制約が消えると何が起きるかを、最初に一冊にまとめた本
- 読む『Future Perfect』スタン・デイビスマス・カスタマイゼーションの出発点。1987年の本だが、いま読むほうが刺さる
- 観る国立国会図書館の分類表「探せるように分ける」を極限まで詰めた設計。広告のセグメントより緻密
- 試す同じ広告を、宛先だけ変えて2本出すクリエイティブを変えずにターゲットだけ変える。差がどこから来るかが分かる
- 試す自社の問い合わせを、来た人の属性で並べ直すすでに来ている人の分布が、次に作るべきページの一覧になる
問いの連鎖
- 分けられるようになったとき、人はまず何を分けたがるのか。
- 「あなただけに」と言われて嬉しいのは、どこまでの粒度までだろう。
- 1,000通りに分けたとき、その1,000は誰が決めたことになるのか。
- 受け皿が無限に増えたあとに残る、分けられないものは何か。
次に読む — AIでつくったもの、全部見せます/工務店の出口戦略
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