一級建築士事務所
行灯の光が床を照らす、高台の家 PROJECT DOCUMENT — COMPLETED 2026.03
一棟のドキュメント

「高台の家」ができるまで。

一棟の家は、どんな時間をたどって建つのか。
2025年4月の雑談から、2026年3月の鍵のお渡しまで。実際の一棟を、日記のかたちで公開します。

002025.04出発点

事務所に、ご夫婦が来た。

「土地も、言葉も、まだ何もないんですけど」。それがこの一棟の最初の言葉でした。お茶を淹れて、2時間。出てきたのは「雨の日が、わりと好き」という意外な一言。ここから全部が始まります。

打ち合わせは、夕方の事務所で。
打ち合わせは、夕方の事務所で。
012025.05土地探し

安すぎる土地には、理由がある。

設計者が同行して6件目。坂の上に、相場よりずっと安い土地がありました。理由は傾斜。でも図面を頭の中で3回建てて、確信しました。この欠点は、設計で消せる。むしろ、町を見下ろす特等席になる。

022025.06ヒアリング

「雨の日が好き」を、設計の言葉に翻訳する。

好きな旅先、好きな時間帯、休日の過ごし方。3回目の打ち合わせで、この家の背骨が決まりました。雨音が聞こえる軒、濡れない縁側、雨の夜がいちばん美しい照明計画。要望書には絶対に書かれない要望が、いちばん大事です。

サンプルと図面を広げて、何度でも。
サンプルと図面を広げて、何度でも。
032025.07最初のプラン

プランが出た日、奥さまが泣いた。

初回提案の日はいつも緊張します。土地の傾斜をそのまま活かした断面と、「雨の夜のためのカウンター」の一枚。「私たちより、私たちの暮らしを分かってる」と言ってもらえました。この仕事のいちばんのご褒美です。

カウンター土間寝室LDK
042025.08スタディ

3Dで、雨の夜を先に体験する。

模型とCGスタディで、光の当たり方を検証します。行灯の高さは3案、カウンターの窓は5案つくりました。迷った案は、全部お見せするのが流儀です。選ぶのは、住む人だから。

スタディ検証のひとこま(イメージ)
スタディ検証のひとこま(イメージ)
052025.09確定

図面と、性能と、金額を締め切る。

楽しい話の前に、耐震等級3(許容応力度計算)・断熱・気密・空調計画・総額を全部確定。ここから先、金額は増えません。この約束があるから、以降の仕様選びは純粋に楽しい時間になります。

062025.10現場

図面を描いた本人が、現場に立つ。

上棟の日は、ご家族も現場に。気密測定はC値0.3が出ました(全棟実測・出なければ是正)。納まりの判断はその場で設計者が下します。伝言ゲームをしないのが、設計施工一括にこだわる理由です。

072026.01しつらえ

インテリアは、障子と行灯で。

家具・照明・カーテンまで、図面と同じ手でコーディネート。この家は障子のやわらかい光と、床を照らす行灯だけにしました。家が主役ではなく、雨の夜が主役だからです。

障子と行灯。照明はすべてグレアレス。
障子と行灯。照明はすべてグレアレス。
082026.03引き渡し

完成。鍵と一緒に、家の履歴書を。

雨の夜を待って、ルームツアーを撮りました。町の灯りを見下ろすカウンターは、想像のとおり、いや、それ以上でした。図面・仕様・検査記録をまとめた「家の履歴書」を鍵と一緒にお渡しして、この一棟のドキュメントはいったんおしまい。ここからは、暮らしの時間です。

夜のカウンター。町の灯りを見下ろす。
夜のカウンター。町の灯りを見下ろす。

この家は、いま。

引き渡しから、暮らしの時間が始まっています。設計した本人が語るルームツアーと、住み手の本音は、こちらから。

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