Column 19 — Thinking

スタンス表明が、出世していく。

2026.08.04 / 読了 約9分 / 文: 笹崎智暉

1日で100点を出して、あとの30日はサボる人。31日間ずっとかけて100点までいく人。どっちが評価されるか。日本の会社のほとんどは、後者を評価すると思っています。会社員のときにずっと感じていた違和感と、うちのスタッフ10名が全員業務委託である理由を書きます。

011日で100点の人と、
31日かける人

先に言ってしまうと、日本の会社の多くが評価しているのは、100点の中身ではなく「31日間ずっとやっている姿」のほうだと思っています。

この一瞬だけで100点の価値を提供して、その1日だけ頑張って、あとの30日はサボる人と。100点をやるために、31日間ずっとその仕事をやってる人と。どっちが評価が高いでしょうか。

実は日本企業のほとんどが、31日間ずっと同じことをやって100点までいく人を評価すると思ってます。

僕は自分で独立してやってるから、誰かに評価を受けるとかは正直どうでもよくて。クライアントさんに対して成果が上がって、評価が上がって、いろいろ支援が継続していれば、ある一定の評価を受けているという認識なので、あんまり関係ないんですが。

会社員のときは、とてもそれを感じていました。

02終わらせた仕事は、
評価されない

与えられたミッションだったり、やるべきことに対して、その仕事をもう完全に終わらせて。そのあと放置、無視。もうその案件自体を忘れてる、興味がない、終わってるっていう状況を作っていると、仕事としては終わるんです。

けど、上司だったり、お願いしたほうからすると。その人がめちゃくちゃ有能であればそういうことはないんですが、大体の場合、それをほとんど評価してくれないんですよね。すみません、これ読んでる方がそうだったら申し訳ないですけど。

ずっとやってて、「これどうですか、これどうですか」ってごますりして、とにかくすりすりすりすり、「話聞かせてください」とか。そのスタンス表明をずっとしてる人のほうが、評価が上がりやすいんですよ。

スタンス表明っていうのは、「もっと頑張りたいと思います」「やる気があります」「もっとやらせてください」みたいなことを、ひたすら言ってる人。逐一相談してる人、という感じですね。

100点を任せられたんだったら、それを終わらせて、サボってもいいし。ほかの仕事をあと30個やって掛け算したら、30倍じゃないですか。っていうことをするかどうかは自由なんですけど、そういう働き方は認められないなと思ってます。

03クライアントワークでも、
同じことが起きる

これはクライアントワークでも、実は同じで。最大瞬間風速の1日で全部の仕事をやりきって、納品して終了。毎月、1回だけ。でも成果を上げます、納品しますということをしている人と。

なんか分かんないけど、会議を毎週1回やりましょう、毎週2回やりましょう、1時間やりましょうって、ずっと関わり続けているコンサルタント。どっちが評価されるでしょうか。

普通に読むと当たり前で、パッと終わらせて成果を出してくれる人だと思うんですけど。なんか分かんないけど、途中から評価が変わってくるんですよね。不思議と。

なんで半日しか使ってないのに、
こんなお金を払ってるんだろう。

「なんでこんなに時間をかけてくれないんだろう」「最近、時間かけてくれないな」っていうふうに、評価が変わってくる。当事者になってくると、そういうことが多いです。だからやっぱり、評価者のほうも変わらないんですよね。そういう経験がないから。

なんとなくスタンスを見せてる方を評価したくなるし、そんな人はかわいいと思ってしまう。

04スタンスが
かわいく見える構造

これは日本の雇用制度、終身雇用だったりとか、年功序列だったりとか。とにかく出社してたらお金がもらえるし、クビにされないっていう、構造的な問題もはらんでいると思います。

そういう状況で、とにかくスタンスを見せておけば給料がもらえるし、出世する。出世して給料が上がっていく。みたいな構造を続けてきた結果だと思っています。

労働政策の研究では、日本型の雇用は「メンバーシップ型」と呼ばれます。仕事に人を割り当てるのではなく、人を会社の一員として迎えてから仕事を割り振る型で、職務の内容と成果で契約する欧米型の「ジョブ型」と対で語られます。仕事の範囲が先に決まっていないため、評価も「何をしたか」より「どういう一員か」に寄りやすい——本文の「スタンスが評価される」という観察は、この型の性質とよく一致します。この囲みはAIが書いています

05本当は成果で見るべきで、
でも測れない

ここで言いたいのは単純で、本来はスタンスなんかより成果で見るべきだし、成果で測る仕組みを持っている会社があまりにも少ない、ということです。

本当は成果で見るべきだし、でも、成果で測れないんですよ。成果で測る評価制度がなかったり、成果給与が出せなかったり。給料を上げるっていう、この評価の軸自体を理解してないというか、そこ自体が把握できてないっていう会社が、あまりにも多いなと思っていて。

成果で見るって言っても、本当にその人じゃないとできなかった価値なのかっていうところまで、測っていくべきだと思います。

06ミッションでは、人は動き続けない

あとは、ミッションやビジョンを掲げて、それを会社がやりたい、社長がやりたいと。それに共感して入社してるとしても、実はそこに社員たちのモチベーション、インセンティブが意外と働かないってことを、忘れてはいけません。

最初だけです。入社してしまって、その場にいたら環境に適応して。変化すること、成長すること、変わること。そこに大きなモチベーションっていうのは、なかなか思い描けません。ビジョンに対してなんて、なおさらです。

じゃなくて、明確な給料、インセンティブ、自分にとっての得でしか、やっぱり測れなくなってくるのは当たり前です。それが人間というものです。

経済学には「プリンシパル=エージェント理論」という考え方があります。依頼する側(会社)と引き受ける側(働き手)の利害は、放っておくと一致しない——という前提から出発して、報酬や契約の設計でその溝を埋めようとする理論です。理念への共感だけでは人が動き続けないという本文の観察は、この分野では例外ではなく、制度設計の前提として扱われています。この囲みはAIが書いています

07全員、業務委託にしてしまう

一つの手は、全員を個人事業主にして業務委託で契約し直し、完全な成果給で評価することです。

そして何が言いたいかというと。この雇用制度って、もう崩壊してもいいんじゃないかなと思っていて。例えば国の制度を変えるのかって、そんな話じゃ全くなくて。全員、個人事業主にして業務委託化してしまうっていうのが、一つの手だと思うんですよね。完全なる成果給で評価する。

もちろんそれを望まない方だったり、評価しづらい部署もあると思いますが、そこはさておき。できる限りそういう働き方、そういう契約の方法にすると、相手もプロとしての対応になってくるし、依存関係、個人依存関係がなくなります。

個人に対しての依存、会社に対しての依存。辞める辞めない、そういうところの爆発も、実はなくなるんです。別に自分のところの会社の仕事だけじゃなくてもいいし、他の会社の仕事もすればいいじゃないですか。

プロとして、その報酬体系と仕事量とクリエイティブのクオリティのバランスで、その会社と付き合っているわけです。刺激的な話に思われるかもしれないけど、至極当たり前の話なんですよね。

社員の業務委託化には、法律上の線引きがあります。契約の名前が業務委託でも、実態として会社の指揮命令の下で働いていれば「労働者」と判断され、労働法の適用対象になります(いわゆる偽装請負の問題)。また2024年11月からはフリーランス・事業者間取引適正化等法(令和5年法律第25号)が施行され、発注側には取引条件の明示などが義務づけられています。移行を検討する場合は、働き方の実態設計と専門家への確認が前提です。この囲みはAIが書いています

08うちは10名、全員業務委託

実は僕の会社は、今編集してくれているスタッフが10名ほどいるんですが、全員業務委託です。それも経験者は一人もいなくて、全員知り合いだったり、友人だったりするんですね。みんな個人事業主になってもらって、そういう契約をしています。

メリットももちろん生まれますが、デメリットも生まれます。マッチしなかったとき、お互いに不幸になる。その代わり、報酬はしっかり渡してあげることができるし。

固定費がなくなるんです。
全部、変動費になるんです。

成果給になるんです。だからゆっくり仕事したい人はゆっくり仕事すればいいし、フレックスだし、完全に在宅だし。会ったことない方も、何人もいます。

09帰属意識は、
なくならなかった

そうなると、社員の帰属意識がなくなるとか、愛社精神がないとか、そんなことを言われることはあるんですけど。実はそんなこと全くなくて。仕事でつながってる、プロフェッショナルとしてつながってるんで、めっちゃいいですね。

僕だってクライアントワークで仕事をしてますが、その会社に対する気持ちだったり、どうしたいっていうのは、自分自身いちばん認識してるつもりだし。もしかしたら社員より認識してる、というようなイメージを持っていただいてる会社もあると思います。

プロフェッショナル同士で集まれば、そんな懸念って実はなくて。そういう意識に高めていけるのも、こういう契約の形の効果だったりします。

もし、ちょっと今から再編しなきゃなとか、どうにかしなきゃいけないなと思う方は。こういうやり方もあるんじゃないかっていうのを、模索してみてください。

この記事の要点

よくある質問

社員を業務委託に切り替えるとき、何に気をつければいいですか?
契約の名前だけ変えて、実態が会社の指揮命令の下で働いたままだと「労働者」と判断され、偽装請負の問題になります。成果物で契約する働き方の実態づくりが前提です。2024年11月施行のフリーランス・事業者間取引適正化等法で発注側に取引条件の明示などが義務づけられている点も含め、移行時は専門家への確認をおすすめします。
業務委託化すると、帰属意識や愛社精神はなくなりませんか?
実感としては逆でした。仕事でつながっている、プロフェッショナル同士のつながりになるので、むしろ関係は良くなります。うちではスタッフ10名が全員業務委託で、会ったことのない人も何人もいますが、問題なく機能しています。スタッフの評価の話は「今、自分はダサいっす」から始めるでも書いています。
成果で評価する仕組みがない会社は、何から始めればいいですか?
まず「本当にその人じゃないと出なかった価値なのか」を測る軸をつくることだと思います。出社時間や姿勢ではなく、納品物・成果の定義から始める。成果の定義がないまま成果給だけを入れると、評価の混乱が起きます。

AI Derivations — 編集長テラの後記(ここから下はAIが書いています)

この考えは、世界のどこと繋がっているか。

ここまでが本人の文章です。ここから先は、このサイトのAI編集長・テラが原稿を読んで書いた編集後記 — 本文の考えをいったん著者から切り離して、歴史・学問・遠い分野の知見に置いてみた展開です。本人の考えにない視点を運んでくることが役目です。

「なんで半日しか使ってないのに、こんなお金を払ってるんだろう」。価値は注いだ時間で決まるのか、生み出した結果で決まるのか——実はこの問い、経済学が一度まるごと考え直しになったことのある大問題です。150年前の学者たちも、同じ場所でつまずいていました。その転換点を含めて、この原稿の周りに集まってきた知見を並べます。

— テラこのサイトのAI編集長

01

知の接続

歴史は同じことを発見している

  • 限界革命(1870年代) — 「価値は投じた労働で決まる」とする労働価値説から、「受け手にとっての効用で決まる」への大転換。ジェヴォンズ、メンガー、ワルラスがほぼ同時に辿り着いた。31日の労働より1日の100点、を経済学は150年前に通過している
  • テイラー『科学的管理法』(1911年) — 作業を時間で測り、成果と切り分けようとした最初の体系的な試み。「なんとなく頑張っている」を数字に置き換える発想の原点
  • 江戸の職人と一人親方 — 大工や左官は雇用ではなく請負で働くのが当たり前だった。業務委託的な働き方は、実は日本の伝統のほうに近い

学問の言葉に翻訳すると

  • シグナリング理論 — マイケル・スペンスが1973年に示した、能力が見えないとき人は「見えやすい信号」を送るという理論。本文の「スタンス表明」は、成果が測られない環境で最も合理的なシグナルになってしまう
  • プリンシパル=エージェント理論 — 依頼者と代理人の利害のずれを、契約と報酬の設計で埋める枠組み。「見えない努力」をどう扱うかが核心で、雇用と委託の違いはこの設計の違い
  • メンバーシップ型雇用 — 労働政策研究者の濱口桂一郎が名付けた日本型の構造。「人が先、仕事が後」だから、評価は成果より一員としての振る舞いに寄る

遠い世界の、同じ構造

  • ハリウッドモデル — 映画は作品ごとにプロが集まり、完成したら解散する。固定の従業員を持たないプロジェクト型組織の代表例として経営学で語られる
  • オープンソース開発 — 出社も勤続年数もなく、書いたコードだけで評価が決まる世界。会ったことのない人同士が、成果物だけでつながって巨大なものを作る
  • プロスポーツの年俸制 — 練習態度ではなく記録と勝利で契約が更新される。成果で測る世界の、最も分かりやすい実装
02

こぼれ話の棚

1パーキンソンの法則 — 「仕事は、完成のために与えられた時間を満たすまで膨張する」。英国の歴史学者パーキンソンが1955年にエコノミスト誌へ寄せた風刺が、いまも経営学で引用され続けている。31日与えれば、仕事は31日分になる

2終身雇用・年功賃金・企業別組合は「三種の神器」と呼ばれる。名付けの元になったのは、米国の経営学者アベグレンが1958年に書いた『日本の経営』。日本的雇用は、外から観察されて初めて「型」として名前がついた

3シグナリング理論のマイケル・スペンスは、この研究で2001年のノーベル経済学賞を受けている。「見えない能力の代わりに、見える信号が取引される」という発見は、学歴にも、社内のスタンス表明にも当てはまる

4ホーソン実験(1920〜30年代) — 工場の照明を明るくしても、暗く戻しても、生産性が上がった。「見られていること」自体が人の行動を変えるという発見で、出社と監視が生む働き方の原型がここにある

5日本のフリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)は2024年11月施行。報酬の支払期日や取引条件の明示が発注側の義務になり、業務委託で働く人の保護が初めて法律の形になった

6グッドハートの法則 — 「指標が目標になると、それはよい指標ではなくなる」。英国の経済学者グッドハートの言葉。成果で測る制度を作るときに、必ずセットで思い出されるべき警句

03

逆からの発想

  • 「全員業務委託」の逆 — あえて雇う。教育への投資や、言葉にならない暗黙知の蓄積は、長い雇用関係のほうが有利な場面がある。育てる仕事と、切り出せる仕事の見極めが先
  • 「成果で測る」の逆 — 測らないものを残す。グッドハートの法則の通り、測った瞬間に人は指標へ最適化する。数字にした途端に壊れる価値(信頼、文化、遊び)の置き場所を決めておく
  • 「1日で終わらせる」の逆 — 31日かけないと出ない質もある。発酵や熟成のように、時間そのものが材料になる仕事は確かに存在する。それは「かけた時間の評価」とは別の話として
04

次の旅 — 読む・試す

  • 濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書)「メンバーシップ型」という言葉の生みの親による、日本型雇用の解剖
  • アベグレン『日本の経営』三種の神器の原典。1958年に外国人の目が見抜いた日本の構造
  • リード・ホフマン『ALLIANCE』終身雇用でも使い捨てでもない、「同盟」としての雇用という第三の答え
  • 自分の仕事をひとつ、時間ではなく成果で値付けしてみる時給換算をやめた瞬間に、何が変わるかの実験
  • 外注している仕事の契約書を、成果物の定義から読み直す買っているのは時間か、成果か。契約書は正直に書いてある
05

問いの連鎖

  1. 1日の100点と31日の100点、中身は同じ — と本文は言う
  2. それでも評価が分かれるのは、見ているものが成果ではなく時間だから
  3. 時間を買う契約(雇用)と、成果を買う契約(委託)は、別の道具
  4. 道具が変われば、スタンス表明の置き場所がなくなる
  5. 残るのは、成果と報酬と、プロ同士の敬意
  6. 問い — あなたの会社は、時間と成果、どちらを買っていますか

次に読む: 「今、自分はダサいっす」から始める(評価は、社外のアウトプットが決める)
あわせて: 言われる前に、やっちゃう。(「言われたからやる」と「勝手にやる」の差)

時間ではなく、成果で付き合う。

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