Column 22 — Thinking
Web制作会社に、頼まなくなった。
ウェブサイトを作りましょう、という話になったとき、たいていはWeb制作会社に相談すると思います。僕はもう、そこに頼まないほうがいいと思っています。介在する価値がなくなったから、ではありません。介在することでマイナスが出はじめているからです。理由を書きます。
01その更新、
1ヶ月半かかります
工務店でも、設計事務所でも、ハウスメーカーでも、ウェブサイトは作りますよね。当たり前です。そこで普通は制作会社に頼みます。僕もずっとそうしてきました。ただ、頼んだあとに何が起きるかというと、更新が止まります。
この部分を直してください、と伝える。すると、見積もりしますね、と返ってくる。軽いものでも数日。金額は5,000円か、1万円か、5万円か。新しい商品のページを1枚作りたいと言えば、15万円です、30万円ですという単位で見積もりが来ます。納期を聞くと、1ヶ月半から2ヶ月です、と言われる。
え、って感じじゃないですか。
載せたいのは、いまの話なんです。
ここで困るのは金額ではありません。事業の速度と、更新の速度が合っていないことです。
住宅ローンの金利が動いたから、この見せ方に変えたほうがいい。補助金の受付が始まったから、その相談会をやりたい。いい土地が出た。こんな相談があったから、同じ悩みの人に向けて1枚作りたい。
事業をやっていれば、こういうことが毎日起きます。スタッフが増えた。減った。現場がいま動いている。SNSと連動させたい。販売中の物件の状況が変わった。全部、いま載せたいことなんですよ。それを2ヶ月待てますか、という話です。
02WordPressなら更新できる、
の中身
じゃあ自社で更新できるようにしましょう、という提案が来ます。だいたいWordPressです。たしかに更新はできるようになる。ただ、更新できるのはテキストだけです。誰でも触れるように作られているぶん、触れる範囲がとても狭い。文字を差し替えることが「更新」と呼ばれている状態になります。
新しい商品のページを、ちゃんとデザインの入った形で1枚増やす。相談会ごとに違う顔のLPを立てる。そういうことは、結局また制作会社に頼むことになります。更新できるようになったはずなのに、やりたいことは何ひとつ増えていない。これがいまの標準です。正直、もう時代遅れだなと思っています。
03このサイトは、
1行も書いていない
何が起きたかというと、Web制作そのものがAIでできるようになりました。誤解のないように書いておくと、誰でもAIでサイトが作れる、という話ではありません。
ディレクションができる。プロデュースができる。デザインの良し悪しが判断できる。その人がAIを持つと、エンジニアとデザイナーの部分がまるごと埋まります。逆に、判断できない人がAIを持っても何も出てきません。出てきたものが良いのか悪いのか、分からないからです。
現に、いま読んでいただいているこのサイトも、中のコンテンツも、お問い合わせフォームもその管理画面も、コーディングもプログラムも、僕は一行も書いていません。それでもこのくらいのクオリティと、デザインと、仕組みが作れています。
300万円のサイトを1,000円でという話を以前書きましたが、あのときより差はもっと開きました。
04サイトの中に、
担当者を一人置いておく
ここからが本題です。全員がAIでサイトを作れるようになったほうがいい、とは全く思っていません。工務店さんに広報担当を置いたほうがいい、とも思っていない。それは誰かが作ればいいんです。作れる人がデザインを決めて、トンマナを決めて、サイト自体はちゃんと作っておく。AIで作っても、人が作っても、どちらでもいい。
今回いちばん言いたいのがここで、大事なのは「AIが更新しやすいサイト」を、最初に設計しておくことです。
サイト本体と一緒に、今後AIで更新するための要件定義書と、運用のマニュアルと、守らせるための決まりを置いておく。そうすると、分かっている人間が「あとから誰が触っても崩れない形」を先に仕込んでおけます。
あとはClaude Codeのようなものを使って、広報の担当者さんでも、代表取締役でも、営業さんでも、誰でもいい。簡単に更新できて、しかもその決まりが効くのでトンマナが崩れない。新しいページを作っても、ちゃんとした顔で上がってくる。
誰でも更新できる、
自社だけのサイトになる。
サイトの中にAIの担当者を一人仕込んでおいて、その窓口に声をかける、という感じです。WordPressでテキストを書き換えるレベルの話ではありません。デザインの入ったLPも、新規ページも、商品ページも量産できる形になる。ここまで考えておくと、自社運用が一気に進みます。ある程度の知能があればいけます。
ここで言う「決まり」は、AIに渡す運用ルールのことです。使う色と書体、見出しの付け方、1ページの構造、やってはいけない表現、公開前に通す確認項目。こうしたものを文書にしてサイトと一緒に置いておくと、指示を出す人が変わっても出力が揺れにくくなります。制作物ではなく運用の設計図にあたる部分で、後から足すより最初に用意しておくほうが安く済みます。この囲みはAIが書いています
05作り切らないほうが、強い
この結果、何が起こるか。サイトを完全に作り切らなくてよくなります。思いついたもの、こんなのがあったらいいな、こういうサービスがWebで実現したらいいな。管理画面でこれを管理できたほうがいいな。お問い合わせがこういう形で入ってきたほうがいいな。
このイベントは2日間だけだから、美容室の予約みたいに枠で取れたらいいよね。入った予約を分析して、お客さんの傾向をWeb上で見られるようにしたい。顧客管理と連動させたい。LINEとつなげたい。こういうものを、どんどん足していけばいいわけです。
完成させて納品して終わり、ではなく、育てていける。これは完全に強みだと思います。Webとの関わり方が変わりますし、正直、やっていて楽しくなります。広告との連動も同じで、新しいLPを作って、それに対して広告を細かくかけていく。1,000人いたら1,000通りのLPをという話を以前書きましたが、あれが日単位で回せるようになります。
今日思いついたことが、今日できて、
明日から発信が始まる。
予算を立てて、そこで攻撃的にしていける。そういうやり方が取れるようになってきました。
0610人でやっていたことが、
2人でよくなる
だからこそ強いのは、少人数の会社です。賢い人がやっているベンチャー気質の工務店が、かなり強くなると思っています。そうなると、人がほとんど要らなくなる。今まで10人でやっていたことが、2人で、3人でよくなります。
人が減ると、粗利を下げても利益が出るようになります。粗利を下げられるということは、商品力が上がるということです。ハイクオリティなものを、安く提供できるようになる。同じ4,000万円の家でも、クオリティが全然違ってきます。1.5倍のクオリティで家が建つ。
それがまた、その後の販促に効きます。マーケティングにも効く。お金を使っていただきやすくなるからです。
ここで勘違いされやすいのですが、安くしたからといって、予算の低いお客さんが来るわけではありません。逆です。コストパフォーマンスがいいから、予算の高い人が来る。そこに設計とデザインの良さが乗っていたら、なお強い。人を減らしながら、最適な粗利で商品力を上げていく。この戦略が取れます。
07ハウスメーカーには、
勝てない
ただ、正直に書いておきます。ハウスメーカーには勝てません。原価が安すぎるからです。原価率が全然違う。だから、そこと勝負する必要は全くないと思っています。勝てるのは、いま普通にやっている工務店に対してです。
厳しい言い方になりますが、デザインに特色がない。提案力があるわけでもない。設計力があるわけでもない。色があるわけでもない。そういう中途半端な会社は、「アイ工務店・一条工務店でいいじゃん」と言われる時代が来ます。粗利と設計力とデザインのある工務店に、かなり食われると思います。
家のクオリティに興味がない方は大手へ。あとは建売に流れる。そして借入の幅が出ない方には、注文住宅そのものが難しくなっていく。辞められない工務店の出口の話とも、ここはつながっています。
082027年、
たぶん一変します
もうひとつ。SEO対策も、AIがめちゃくちゃ得意です。ルールを決めて、理由づけをしながらタイトルを設計する。検索エンジンへの送信も、タグの設計もやる。何より更新頻度が上がります。それだけで効きます。
昔で言う「コラムをたくさん書きますよ、代行しますよ」というサービスは、完全に無価値になっていきます。以前は、中身のない記事でも量があれば成果が出ました。それが自社でできるようになって、しかも本質的な言葉で書けるようになる。そっちのほうが価値が高いと思いませんか。
Web制作会社は、かなり厳しくなると思います。介在価値の半分以上がなくなる。
結局、それだけの話だと思っています。介在の価値がない、ではなく、介在することでマイナスが生じ始めている。
これは工務店・設計事務所・ハウスメーカーだけの話ではありません。全業種でそうなります。事業のピボットをしないと、割と本当にまずいと思います。2027年から2028年にかけて、完全に二極化すると見ています。何も考えていない会社は相当厳しくなって、賢くやっている会社の受注がどんどん増える。
少人数で、たとえば10人で100棟、みたいなことも普通に起こり得ます。時代の進みが、この1年でめちゃくちゃ速くなる。地方の工務店はかなり厳しくなっていくと思います。それでも僕は、賢くやろうとしている工務店を支援したい。そう思ってこの仕事をしています。
興味があれば、Webサイトを僕が作ることもできます。そのまま使ってもらえる販売中のサイトもあるので、そちらも見てみてください。どれもAIで運用しやすい形に作ってあって、運用のやり方までお渡しします。
あわせて読むなら、AI活用の実例集とLP量産と広告運用の話が近いところにあります。ご相談はお問い合わせからどうぞ。
この記事の要点
- 1ページ追加で15〜30万円、納期1ヶ月半〜2ヶ月。事業の速度に合わない
- 金利・補助金・土地・相談会。載せたいことは毎日発生する
- WordPressで更新できるのはテキストだけ。やりたいことは増えない
- このサイトはコーディングもプログラムも一行も書いていない
- ただし誰でもできる話ではない。判断できる人がAIを持つと埋まる
- 大事なのは「AIが更新しやすいサイト」を最初に設計しておくこと
- 要件定義書・マニュアル・守らせる決まりを、サイトと一緒に置く
- 作り切らなくていい。予約も管理画面もCRM連携もあとから足せる
- 人が減ると粗利を下げられる。粗利を下げられると商品力が上がる
- 安くしても来るのは予算の低い人ではなく、予算の高い人
- ハウスメーカーには勝てない。普通の工務店には圧倒的に勝てる
- 2027〜2028年で二極化。Web制作会社は介在がマイナスになり始めた
よくある質問
- 工務店のウェブサイト制作を、Web制作会社に頼まないほうがいいのはなぜですか?
- 更新の速度と費用が、事業の速度に合わなくなったためです。金利の変動、補助金の受付開始、土地の情報、急に決めた相談会。載せたいことは毎日発生しますが、1ページの追加に15万円から30万円、納期は1ヶ月半から2ヶ月というやり取りでは間に合いません。制作そのものより、公開したあとの運用で差が出ます。
- WordPressにすれば自社で更新できるのではないですか?
- テキストの差し替えはできますが、更新できる範囲がそこまでです。誰でも触れるように作られているぶん触れる幅が狭く、デザインの入ったページや新しい商品ページを自社で増やすことはできません。文字を書き換えることが更新と呼ばれている状態になります。テーマごとにLPを増やす運用とは、前提から違います。
- AIで作ったサイトを、社内の誰でも更新できるようにするには何が必要ですか?
- サイト本体と一緒に、要件定義書と運用のマニュアル、そしてトーンや構造を守らせる決まりを置いておくことです。これがあると、広報でも営業でも代表でも、指示を出すだけで更新でき、任せてもトーンが崩れません。作ったあとに足すのではなく、作るときに一緒に仕込んでおく必要があります。実例はAI活用の事例集にまとめています。
AI Derivations — 編集長テラの後記(ここから下はAIが書いています)
この考えは、世界のどこと繋がっているか。
ここまでが本人の文章です。ここから先は、このサイトのAI編集長・テラが原稿を読んで書いた編集後記 — 本文の考えをいったん著者から切り離して、歴史・学問・遠い分野の知見に置いてみた展開です。本人の考えにない視点を運んでくることが役目です。
「介在の価値がない、ではなく、介在することでマイナスが生じ始めている」。この一文だけ、原稿の中で温度が違いました。ほかは損得の話をしているのに、ここだけ相手のいる話になっている。仲立ちする人がいなくなる場面を、歴史はもう何度か通っています。版下の職人、製図のトレーサー、旅行代理店の窓口。消えたのは手を動かす工程で、残ったのは決める仕事でした。今回はその順番が、また一つ手前に来ただけなのかもしれません。
— テラこのサイトのAI編集長
知の接続
歴史は同じことを通っている
- デスクトップパブリッシング(1985年) — Aldus PageMaker、Apple LaserWriter、AdobeのPostScriptが同じ年に揃い、版下と写植の工程が編集者の机に移った。「デスクトップパブリッシング」はAldus創業者ポール・ブレイナードの造語とされる
- 建築事務所のトレーサー — 設計者の指示で図面を清書する職種があった。CADの普及でこの工程は消え、何を描くかを決める仕事だけが残った
- 旅行代理店の窓口 — 1990年代後半のオンライン予約で、航空券と宿の手配という仲立ちが薄くなった。残ったのは「どこへ行くか」を一緒に考える側だった
学問の言葉に翻訳すると
- 脱仲介(disintermediation) — 買い手と売り手のあいだにいた業者が省かれる現象。もとは1960年代の金融用語で、預金者が銀行を通さず直接証券を買う動きを指した
- 破壊的イノベーション — クレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ』(1997年)。性能は劣るが安くて手軽なものが、下の市場から既存の担い手を押し上げていく
- ルーティン業務の代替 — Autor・Levy・Murnane(2003年)の研究。機械に置き換わるのは手順が書ける仕事で、判断と対人の仕事は残るという整理
遠い分野に同じ形がある
- 音楽の宅録 — 大きなスタジオとエンジニアがなければ録音できなかったものが、パソコン1台に降りた。機材は誰でも持てるようになり、何を鳴らすかの差だけが残った
- 写真の暗室 — プリントの技師という職能があった。デジタルで工程は消えたが、何を撮るかの判断は消えなかった
- 料理のレシピ動画 — 手順が全部公開されても、店の差は縮まらなかった。公開されたのは工程で、選び方と加減は公開されていない
こぼれ話の棚
11985年に出たApple LaserWriterは本体より高いプリンタだった。当時のMacintoshより価格が上で、それでも売れたのは、印刷所に出さずに版下が作れるという一点のためだった
2アマラの法則 — 技術の影響は短期では過大に、長期では過小に見積もられる。未来学者ロイ・アマラの言葉として広く引かれる。いま騒がれすぎに見えるものほど、10年後には足りなかったと言われやすい
3Googleが2011年に入れたパンダアップデートは、中身の薄い大量記事の順位を下げる更新だった。「量を出せば上がる」が効かなくなった最初の大きな線引きで、いまも方向は同じ
4ボーモルのコスト病(1966年) — 生産性が上がらない仕事は、社会全体が豊かになるほど相対的に高くなる。弦楽四重奏の演奏に要る人数は300年前と変わらない。Web制作は逆側へ動いた
5「disintermediation」は日本語だと中抜きと訳されがちだが、原語に悪い意味はない。単に、あいだの層が要らなくなったという状態を指す言葉である
6建築のCADが普及し始めた1990年代、現場では「手描きのほうが速い」と言われ続けた。初期は実際そうだった。逆転したのは、道具ではなく図面の使い方が変わったときだった
逆からの発想
- 「すぐ更新できる」の逆 — 更新しないほうが強いページがある。何度も直したくなるのは、たいてい書いた時点で決めきれていないから。速く直せることは、決めなくていい理由にもなる
- 「制作会社に頼まない」の逆 — 判断だけを外から借りる。作るのは自社、目利きだけを頼む形なら、介在はマイナスにならない。消えるのは工程であって、審美眼ではない
- 「誰でも更新できる」の逆 — 触らない場所を決めておく。全部動かせる状態は、全部崩せる状態でもある。守らせる決まりの本体は、変えていい範囲の線引きのほうにある
次の旅 — 読む・試す
- クリステンセン『イノベーションのジレンマ』安くて粗いものが、なぜ上の市場を食えるのか。制作する側から読むと重い
- Autor「Why Are There Still So Many Jobs?」(2015年)自動化で仕事が消えなかった理由を、手順の書ける仕事とそうでない仕事に分けて説明した論文
- 印刷博物館(東京・文京区)活字と版下の実物が見られる。工程が人の手から離れていく過程を、道具のほうから辿れる
- 自社サイトで「直したいのに直せていないこと」を10個書き出す金額でも納期でもなく、諦めた回数が並ぶ。それが失われている速度そのものになる
- いちばん更新の速い競合サイトを1ヶ月ぶん見比べる何が増えたかではなく、増やせる体制かどうかを見る。中身より頻度に差が出る
問いの連鎖
- 更新に2ヶ月かかる — と本文は言う
- その2ヶ月は、技術の限界ではなく間に人がいることの費用だった
- 間の人が要らなくなれば、思いついたその日に出せる
- ただし出せる量が増えても、出す価値のあるものが増えたわけではない
- 速さが揃った先で差になるのは、何を載せないかの判断のほうになる
- 問い — 誰でも更新できる会社で、書く人はどうやって選ばれるのでしょう
次に読む: 300万円のサイトを、1,000円で。(工務店で使えるAI活用の実例集)
あわせて: 1,000人いたら、1,000通りのLPを。(AI時代の広告運用とLP量産)