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09 / JOURNEY

FabCafe Osaka — Temma, Osaka

FabCafe
Osaka

テーブルの下に、穴がある

  • 大阪・天満
  • 元・自動車整備工場
  • コンバージョン
  • 井上真彦

2026.08.20 / 大阪・昼

大阪・天満のFabCafe Osaka。外から見ると「あれ、なんだろう」って思う感じの外観で、正直ね、全然わかんなくて。でも中に入るとびっくり、めちゃくちゃおしゃれなカフェで——そして、一番メインのテーブルの下に、穴があるんです。

01カフェ

外からは、正直わからない

Street

大阪にあるFabCafe Osakaというカフェに行ってきました。外から見ると「あれ、なんだろう」って思う感じの外観で、通り沿いにあって、「あれ、そんなおしゃれなとこなのかな」と。事前に調べていたので行ってみたんですが、外からは正直ね、全然わかんなくて、「うん」って感じだったんです。

通り沿いの外観。正直、外からは全然わからない
窓のFabCafeサイン。what do you fab? TAKE OUT OK!の窓。キャッシュレス専用
02びっくり

中に入ると、めちゃくちゃおしゃれ

Inside

中に入ってみるとびっくり、めちゃくちゃおしゃれなカフェで。インダストリアルな雰囲気の中にも、洗練されたカフェスタイル。韓国カフェみたいなイメージなのかな。ステンレスの雰囲気と無機質なイメージの中に、ちょっとナチュラルな雰囲気も入りつつ。

インダストリアルって、黒っぽかったりアイアンっぽかったりっていうのが多かった気がするんですけど、最近のインダストリアルって、こっち系になってきてるんじゃないかなって気がしました。現代風ですごくモダン——モダンっていうとちょっと使い古された言葉ですけど、先進的なイメージもあって。

店内の引き。ステンレスの無機質に、ナチュラルが混ざる
ステンレスのキッチンアイランド 奥はイベントもできるスペース。ものづくりの拠点でもある 窓辺の席から、天満の通りを見る
03発見

テーブルの脚が、
木でできてる

The Hole

このカフェ、どう考えても普通に、様々な角度で見て「おしゃれだな」「人気ありそうだな」っていうカフェだったんですが。そこで、一番メインの机の脚が「あれ、これ木でできてるんだ」と。というか——下から木が生えてきてて、その木の上に天板が乗って、机になってる。何これ何これと思って、「え?」って感じで覗き込んだんですよ。

机の下は空いていて、足を入れられるようになってるんですが、その下に木が生えてて。よく見てみると、その下に椅子があって。「あれ、この下にもなんかあるぞ」って思ったんですよね。

メインテーブル。脚が、下から生えた木
天板を貫く木。飛騨の広葉樹の小径木 天板の裏から見上げる。木がそのまま脚になっている
04ハッチ

「ちょっと、見てみますか」

Down the Hatch

覗いていると店員さんが「え、ちょっと見てみますか」って言ってくれて。ハッチみたいなのがあって、パカッと開けると——実はその下にも空間があって、椅子が置いてあったり、ちょっと荷物が置けたり、そういう空間が広がってたんです。

まず「すごい空間だな、かっこいいな」って。こんな空間を利用しながら、上下の抜け感があって、唯一のような空間を作っていて。おしゃれだなと思わせる——ああ、設計すごいなと思ったんですけど、実はそれだけじゃなかったんです。

穴を覗くと、下に椅子と棚が見える
ハッチの蓋。パカッと開く 穴の見下ろし。深さ約1.8m
05種明かし

ここ、自動車整備工場
だったんです

The Pit

聞いてみると、この空間、もともと自動車整備工場だったらしいんです。それをコンバージョンして作ったカフェ。

整備工場って、車を下から上げて、エンジン周りを見たり、足回りを見たり、タイヤを変えたり、オイル交換したりっていう整備があるじゃないですか。そのために床にピットがあるわけですが、その昇降台の部分を取り除いて、あの空間ができたと。なんかすげえと思って。これこそコンバージョンだ、これこそリノベーションだって気がしたんですよね。

ちなみにリノベーションとコンバージョンの違い。リノベーションは、既存の建物に改修を加えて価値や性能を高めること。コンバージョンは、そのなかでも用途を変えてしまうこと。整備工場だったものをカフェにしちゃう——今回のはまさにコンバージョンで、この面白さだなって気がしました。

もともとあった、工場ならではの「あるべくしてある」もの。もともと使ってた従業員さんたちももちろん嬉しいし、予算・コスト的にも抑えられて、サスティナブルでもある。すごくいい取り組みだと思うし、これこそ設計だなっていうのを感じたカフェでした。

ピットの中。椅子と、荷物の置き場になっている
ピットの中から見る木の幹 ピットから見上げる。木が天板を貫いて伸びる
設計の答え合わせ — 調べたら、意図のど真ん中だった

この穴、偶然残ったものではありませんでした。空間設計は井上真彦さん(Marginalio Inc.)。grafで空間とプロダクトのデザインを担当したのち独立して、高架下・河川敷・防波堤・水上——「都市の余白」を扱い続けてきた建築家です。東横堀川の水辺の拠点「β本町橋」もこの人。事務所の名前にも、余白(margin)という言葉が入っています。

当初はピットを収納やカフェスペースにする案もあったそうですが、最終的に深さ約1.8mの穴をそのまま残して、飛騨の広葉樹の小径木(シデ、カエデ、ミズメザクラ、ヤマザクラ)を差し込み、センターテーブルと一体化させた。鉄骨のブレース、増改築でできた壁の凹凸、スイッチプレート——痕跡は、できるだけ消していない。あの独特な質感の壁は、淀川の浄水場から出る「浄水発生土」を篩にかけて吹き付けた土壁。大阪という土地そのものを、内装材に持ち込んでいる。

「これこそコンバージョンだ」という感想は、設計者の意図のど真ん中だったみたいです。この空間は日本空間デザイン賞2025のロングリストにも選ばれています(Food space部門)。

壁に残された鉄骨のブレース 浄水発生土の土壁と、残されたスイッチプレート 階段と木。上下の抜け感
建築の目線

「古いものを残したからサステナブル」で終わらせない。その場所にしかない過去の痕跡を、新しい設計の"理由"に変える。住宅のリノベでも同じで、「全部新しくしましょう」の前に、その家にしか無いもの——梁、床の傷、増築の継ぎ目——を数える。弱点や制約に見えるものが、その家にしかない魅力の種になる。

06おすすめ

いろんな目線で見られる場所

Coffee & More

もちろんコーヒーもこだわりがあってめちゃくちゃ美味しかったし、クリエイティブな人たちがすごく出入りしていて。建築としても面白いし、アートとしても面白いし、ビジネスとしても面白い。いろんな目線で見られて、ゆっくりもできるところなので、近くに寄ったときはぜひお立ち寄りいただけたら。

あと、トイレの中に、世界の風景が映る窓枠デザインのディスプレイが付いていて(たぶんAtmoph Windowという「デジタルの窓」だと思います)。入った瞬間もそうですけど、トイレの中まで面白い。見どころ満載のカフェでした。

「音を刺繍する」の展示。ものづくり拠点でもある トイレの中の「窓」。世界の風景が流れる
FabCafe Osaka
元・自動車整備工場をコンバージョンしたカフェ+ものづくり拠点。2025年4月29日オープン、世界13拠点目・国内6拠点目のFabCafe。運営はロフトワーク
空間設計
井上真彦(Marginalio Inc.)
場所
大阪市北区天神橋2-2-4
時間
11:00–18:00(イベント開催時は変更あり) ※2026年8月時点
行き方
JR東西線「大阪天満宮」徒歩5分/Osaka Metro「南森町」徒歩5分
公式
fabcafe.com/jp/osaka

Afterword — 旅の、あとがき

制約は、その場所にしかない魅力の種。

「なぜこの空間が好きなのか」を言葉にできると、家の撮り方も、見せ方も、提案も変わります。旅はぜんぶ、仕事の目線に還元しています。

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