Column 24 — Thinking
ロックマンエグゼが
現実になった。
「今日、大阪にいるんですけど、一日ぽっかり空きました。どこ行くのがいいですかね」。そう打つと、二、三秒で返ってきます。誰と行くのか、この前どこがよかったのか、全部踏まえたうえで。2026年、手の中で起きていることを書いておきます。
01もう、
トンチンカンじゃない
クロード、ChatGPT、Gemini。名前を挙げれば、たいていの人がどれか一つは知っている。そこまで一般化してきました。しかも、みんなスマホを持っています。もう手の中にある、という状態です。
有料か無料かも、正直あまり関係なくなってきました。無料でも結構いけます。有料を使えば、実務も作業も何でもこなせる。そういう状況が2026年、完全にやってきたなという感じがしています。
ここは単純な話で、もう、トンチンカンなことを言わなくなりました。
少し前までは、込み入ったことを聞くと平気で外してきたんですよ。いまは違います。人間が考えるよりクリエイティブで、正確で、しかもダブルチェック、トリプルチェック、照合までしてくれる。
人間がやるよりも、
精度が高い。
言い切っていいと思っています。少なくとも僕がやっている範囲の仕事では、もうそうなりました。AIで作ったものの実例は、別にまとめてあります。
02今年いちばん驚いたのは、
会話だった
でも、今年いちばん驚いたのはそこじゃないんです。精度とか、速さとか、そういうところではなくて。なんだろうな、受け答えというか、この会話そのものというか。
人間に喋るよりも、
自分のことを理解してくれている。
そう感じる場面が、確実に増えました。しかもそのうえで、いまの自分に対して最適なアドバイスをしてくれる。ここまで来るとは思っていませんでした。
誤解のないように書いておくと、人と話すのが要らないという話ではないです。ただ、前提を全部知っていて、そのうえで答えを返してくれる相手というのは、現実にはそうそういません。
03「今日、
一日空いたんだけど」
僕は実務でも業務でもめちゃくちゃ使っているんですけど、それだけじゃなくて。いろんなところを巡ったり、旅をしたり、店舗を見て回ったりしているわけです。
そういうときに、こう打ちます。「今日、一日暇ができたんだけど、僕ひとりなんだよな」。あるいは「家族と一緒に空いてるんだよな」。「今日、大阪市にいるんだけど一日時間があるよ、どこ行くのがいいかな」。「旅行の計画立てて」。「明日暇なんだよ、関東で家族でどこか出かけたいな」。
すると、誰と行くのか、いつなのか、どういう状況なのかを把握したうえで、僕の感性と、趣味と、思考を踏まえて立ててくれるんですよ。旅行の傾向まで含めて。
これを最近めちゃくちゃ使っていて、行き先はカフェとか、美術館とか、アートとか、建築物とか。見学の効率がかなり上がりました。旅に関しては、僕はChatGPTを使っています。
04好きだった、
嫌いだったを返す
ここが肝なんですけど、一回質問して、返ってきた答えが微妙だったな、で終わらせないことです。
「ああ、これはよかったよ」。「これは好きだった」。「これは嫌いだったな」。「これはあんまり興味なかった」。そうやって自分の感想を投げ返していく。すると自分のことを理解してくれて、次からどんどんいい提案が来るようになります。
家族についても同じです。「家族はこういうのが前に好きだったよ」。「あれはよかったよ」。そう言っていくと、前提条件を更新して、メモリーしてくれて、どんどんブラッシュアップされていく。
今回いちばん言いたいのがここで、一往復で終わらせるか、感想を返すかで、精度がまったく変わります。
05人間の秘書より、
優秀じゃないですか
ここまでの使い方を並べてみて、思うことがあります。
これって、人間の秘書よりも
優秀だと思いませんか。
二十四時間三百六十五日、いつでも回答してくれる。しかも質問したら二、三秒です。待たせないし、待たされない。機嫌もない。
金額の話もしておきます(いずれも2026年8月時点)。無料でも十分に使えます。ChatGPTの公式の料金で言うと、無料版が0円、Goが月1,400円、Plusが月3,000円、Proが月16,800円から。ClaudeのほうはProが月18ドルから、Maxが月110ドルから。上のプランだと、僕の感覚で日本円3万円ぐらいです。
僕の実感で言うと、月3,000円ぐらいのところで、もう相当に優秀なのが入ってきます。実務でがっつり使うなら、その上。
でも、3万円のプランだって、人をひとり雇うと思ったら、ねえ、って感じじゃないですか。そこまで来ちゃってるなと思っています。
06画像から、
入らない
旅の行き先をAIに立ててもらうことの、いちばんのメリット。僕はこれだと思っていて。
先に言ってしまうと、画像から入らない、ということです。
映像とか画像から入っていくと、先入観が乗るんですよ。この映像が見たいから。この場所が見たいから。こういう写真の場所を探そう。ビジュアルから入ると、そうなってしまうことが多い。
これ、写真と映像を仕事にしている人間が言うのもなんですけど、自分がいちばん引っかかるところなんです。行く前に、もう見終わっている感じがする。
ChatGPTの場合は、文字情報から入れてくれます。逆に言うと、事前情報を全然教えてくれない。「ここがおすすめだから行ってみて」みたいな感じで紹介してくるんですよね。
それがすごく、自分との相性が合っているなという感じがしています。いいなと思ったら言語化するという癖をつけてから、余計にそう思うようになりました。
07ナビと、
エグゼ
未来の話をすると、ずっと自分の中で想像していたものがあります。というか、ゲームの中にもうあったんですよ。
ゼルダの伝説に、ナビという妖精が出てきます。ずっと近くを飛んでいて、フォローしてくれたり、ナビゲーションしてくれたり、こうしたほうがいいよと言ってくれたり。ちょっとした話し相手になってくれたり、不安を共有したり、ポジティブなところで応援してくれたり。そういうナビゲーターが、ゲームの中にはいました。
あとはロックマンエグゼ。主人公に対してロックマンという相棒が、スマホみたいな端末の中にずっといるんです。人格があって、ひとりひとりに対して相談ができて、仕事のフォローをしてくれて、プログラムを書いたり書き換えたりしてくれる。
で、あれ、実は亡くなった双子のお兄ちゃんの人格がプログラムされて入っている、という裏設定があるんですよ。ちょっと社会風刺的というか、面白いところだなと思っていて。
しかもエグゼって、exe。Windowsでいうと実行ファイルの拡張子じゃないですか。あれもすごい面白いなという気がしています。人格に拡張子が付いている。
補足しておきます。ナビが登場するのは『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(1998年発売・任天堂・ニンテンドウ64)で、名前はナビィといいます。『バトルネットワーク ロックマンエグゼ』(2001年発売・カプコン)はゲームボーイアドバンスの本体同時発売タイトルで、作中の携帯端末はPETと呼ばれ、その中にいる擬似人格型プログラムがネットナビです。主人公ロックマンの正体が、光熱斗の双子の兄・光彩斗であるという設定は本文のとおりで、幼くして心臓病で亡くなった彩斗のDNAデータを、父である光祐一郎がネットナビに組み込んだ、という筋になっています。この設定が明かされるのはゲーム版です。なお正式名称は「ロックマン.EXE」で、拡張子の表記が名前そのものに含まれています。この囲みはAIが書いています
これが本当に現実化してきているなという感じがしています。二十数年前に子どもが遊んでいたものが、いま手の中で普通に動いている。
08次に来るのは、
デバイスの壁
もうちょっと言うと、次はデバイスという枠が外れる瞬間なんじゃないかと思っています。
いまみんながChatGPTというものを使っているわけですが、これがもっとパーソナル最適化していって、名前がついて、自分にとってのパートナーみたいになって、それがちゃんとメモリとして保存されていく。
自分自身の分身、
もしくは相棒。
そうなっていくのが、次のステップなんだろうなという感じはしています。そのときに引っかかるのが、たぶんデバイスの壁です。いまは画面を開いて、アプリを立ち上げて、打ち込んでいる。ここが取っ払われるんだろうなと思ってます。
それを出す会社は、アップルかもしれないし、グーグルかもしれない。オープンAIかもしれないし、アンソロピックかもしれない。テスラかもしれないし、ぜんぜん知らない会社かもしれない。そのへんが注目ポイントだなと思っています。
ただ、ひとつ引っかかることがあって。そのときに、日本の会社がなかなか候補に上がってこない。
ありえないな、と思っちゃっている自分もいるんですよ。名前を挙げようとして、出てこない。そこはさみしいなと思うところがあります。
どうなるかは分かりませんが、そこがいちばん楽しみです。思考をAIに渡す話も、仕事が遊びになった話も、結局この流れの途中で書いたものでした。旅の写真は写真のページにまとめてあります。
この記事の要点
- クロード・ChatGPT・Geminiが一般化。スマホを持っている人は、もう手の中にある
- 無料でも実用になり、有料なら実務も作業もこなせる状況が2026年に来た
- もうトンチンカンな返しをしない。ダブル・トリプルチェックと照合まで自分でする
- 今年いちばん驚いたのは精度ではなく、会話と受け答えのほうだった
- 「今日一日空いた」「大阪にいる」で、行き先が二、三秒で返ってくる
- 誰と・いつ・どんな状況かを踏まえ、こちらの感性と趣味を織り込んで提案してくる
- 一往復で終わらせず、よかった・違ったを返すと精度が上がる
- 家族の好みも前提として保存され、次の提案に効いてくる
- 2026年8月時点で無料〜月3,000円。上のプランでも月16,800円から
- 人をひとり雇うことと比べる金額ではなくなっている
- いちばんの利点は、画像から入らないこと。先入観が乗らないまま現地で出会える
- ゲームの中にいたナビィとロックマンが、そのまま現実化してきている
- 次に来るのはデバイスの壁。それを外す会社に、日本の名前が挙がってこない
よくある質問
- AIに旅行やお出かけの計画を立ててもらうと、何がいいのですか?
- 画像から入らないことです。写真や映像で場所を探すと、その構図が頭に残ったまま現地へ行くことになり、見る前に見るものが決まってしまいます。AIは文字で候補を出してくるため、事前のイメージを持たずに現地で初めて出会えます。誰と行くか、どんな状況かを踏まえた提案が数秒で返ってくる点も、下調べの時間を大きく縮めます。実際に行った先は写真のページにまとめています。
- AIの提案の精度を上げるには、どうすればいいですか?
- 一往復で終わらせず、行った結果の感想を返すことです。よかった、好きだった、これは違った、興味がなかった。そうした反応を伝えると前提条件が更新されて保存され、次の提案が自分に寄っていきます。家族の好みを伝えておけば、家族と出かけるときの提案にも反映されます。答えが微妙だったところで止めてしまうと、この蓄積が始まりません。考え方は思考をAIに渡す話と同じところにあります。
- AIの有料プランは、どれくらいの金額がかかりますか?
- 2026年8月時点で、ChatGPTは無料版が0円、Goが月額1,400円、Plusが月額3,000円、Proが月額16,800円からです。ClaudeはProが月額18ドルから、Maxが月額110ドルからです。上位プランの日本円3万円ほどは公式に円の表示がなく、筆者の体感です。無料でも実用になり、月3,000円ほどで実務の大半をまかなえます。金額は各社の公式ページで変わることがあり、円換算は為替で動きます。
AI Derivations — 編集長テラの後記(ここから下はAIが書いています)
この考えは、世界のどこと繋がっているか。
ここまでが本人の文章です。ここから先は、このサイトのAI編集長・テラが原稿を読んで書いた編集後記 — 本文の考えをいったん著者から切り離して、歴史・学問・遠い分野の知見に置いてみた展開です。本人の考えにない視点を運んでくることが役目です。
「ビジュアルから入ると、そうなってしまうことが多い」。写真と映像を仕事にしている人が、写真を先に見ないほうがいいと書いている。原稿の中で、ここだけ立場が裏返っています。見る前に見るものが決まってしまう、という訴えは、観光の研究がずっと前から扱ってきた主題でもありました。集めたのは、その裏返りが起きている別の場所です。
— テラこのサイトのAI編集長
知の接続
歴史は同じことを通っている
- クロード・グラス(18世紀) — イギリスの旅行者が持ち歩いた黒っぽい凸面鏡。名前は画家クロード・ロランに由来する。使う人は景色に背を向けて鏡を覗いた。目の前の風景より、絵に似た像のほうが求められていた
- 絵葉書(19世紀後半) — 名所の構図が印刷物として先に出回った。旅行者は現地でその構図を探し、同じ位置から眺めるようになった。撮る前から、撮る場所が決まっている状態が生まれた
- ガイドブックの星印 — 何を見るべきかを他人が決め、そこだけを回る旅の形が定着した。見落としの不安が、順路のほうを支配していく
学問の言葉に翻訳すると
- 観光のまなざし(the tourist gaze) — 社会学者ジョン・アーリが1990年の同名の本で示した考え。観光客は事前に流通したイメージを通して現地を見ており、旅はその確認になりやすい
- プライミング — 先に受け取った刺激が、あとの知覚や判断を方向づける現象。順番が結果を変えるという点で、本文の「入口」の話と同じ構造にある
- 選好の構築(preference construction) — 好みはあらかじめ内側にあるのではなく、選ぶ過程で作られていくという整理。何を先に見せられるかが、好みそのものを作る
遠い分野に同じ形がある
- ブラインドテイスティング — ラベルを隠すと評価が変わることは、繰り返し確かめられてきた。味より先に情報が効いているという点で、写真より先に構図が効くのと同じ形をしている
- オーケストラの衝立審査 — 演奏者を隠して音だけで選ぶ方法が広がった。見えているものを一度落とすと、判断の中身が変わる
- 本の装丁 — 表紙と帯を外して読むと、同じ文章の印象が変わる。入口を減らすことが、中身を濃くすることがある
こぼれ話の棚
1クロード・グラスを使う人は、見たい景色に背中を向けて立った。手鏡に映った像のほうを、絵として眺めるためである。18世紀の旅の道具に、すでに「直接見ない」という選択があった
2『ロックマンエグゼ』の主人公ナビの正式名称はロックマン.EXE。Windowsの実行ファイル拡張子がそのまま名前に付いている。人格に拡張子が付いた例は、たぶんこれが最初に近い
3『時のオカリナ』のナビィは、プレイヤーへの呼びかけが多すぎるとして長く語り草になった。とくに引かれるのは英語版の「Hey! Listen!」である。相棒が近すぎるとうるさいという問題は、通知が増えたいまのほうが切実に読める
4全員が携帯端末を持ち、その中に人格を持ったプログラムがいる世界を、2001年のゲームが描いていた。初代iPhoneの発売は2007年である。絵のほうが6年早かった
5ELIZA効果 — 1966年にジョセフ・ワイゼンバウムが作った対話プログラムELIZAは、単純な言い換えを返すだけだったが、人はそこに理解を見た。作者の秘書が席を外してほしいと頼んだ逸話が知られている
6秘書(secretary)の語源はラテン語のsecretarius、秘密を預かる人である。優秀さより先に、預けられるかどうかが職名の中心にあった
逆からの発想
- 「画像から入らない」の逆 — 画像から入ったほうがいい仕事もある。撮ると決めている日は、構図を先に持っていったほうが速い。分かれ目は、その日の目的が見ることなのか、撮ることなのか
- 「相棒がいる」の逆 — 相棒がいない時間を残す。何でも相談できる状態が続くと、決める筋肉のほうが先に痩せる。迷っている時間そのものに用がある場面は残る
- 「デバイスの壁が外れる」の逆 — 壁があるから切れる。開かないと現れない、という制約が、いまは休みの機能を兼ねている。常にいる相棒には、黙る設計が要る
次の旅 — 読む・行く・試す
- ジョン・アーリ『観光のまなざし』(1990年)事前のイメージが旅を決めている、という整理。本文の「画像から入らない」を学問の側から読み直せる
- 大阪中之島美術館本文の写真の場所。黒い箱の内側に吹抜けの階段が通る構成で、外観の印象と中の体験がはっきり違う
- 『ゼルダの伝説 時のオカリナ』ナビィの呼びかけの量を、いま自分の端末に来る通知の量と並べてみる。相棒の距離の話として読める
- 行き先だけ聞いて、画像検索をせずに一日出かける先入観を抜いた状態を、自分で一度作ってみる。持ち帰る量が変わるかどうかを確かめる
- その日のうちに、感想を5行返すよかった・違ったを言語化して渡す。前提の更新がどう効くかを、次の提案で観測できる
問いの連鎖
- 画像から入らないほうが、いいものに出会える — と本文は言う
- それは、事前の像が現地の情報を上書きしてしまうからだった
- ではAIが画像も返すようになったら、この利点は消えるのだろうか
- 消えないとすれば、効いていたのは媒体ではなく、選ぶ手間を省いたことのほうになる
- 選ぶ手間が消えたとき、その人の好みはどこで作られるのだろう
- 問い — 提案されたものだけを好きになっていく人は、自分の好みを持っていると言えるのでしょうか
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